「お前な、法律というのはな、それぞれの国によってぜんぜん違うものなんじゃ」
「それぞれの民族、それぞれの人種、それぞれの風習によって、
法律なんてものは まったく違うんじゃよ」
「国だけじゃないぞ、人間ひとりひとりいろんなものさしがある。
病人のものさし、精神病の人のものさし、身体障害者の人のものさし、
どろぼうのものさし、八百屋のばあちゃんのものさし、
子どものものさし」
「いいか?質問じゃ。
おもちゃを取り上げられた赤ちゃんと、生きるとはなんぞやと悩んで自殺した哲学者の悩みと、
どっちが悲しいかわかるか?」
「ばっかだなあ!お前。ひとりひとりの悲しみは違う。
ひとりひとり自分でしかわからないものじゃ。
それを比べるからおかしくなる」
「ひとつのものさし。ひとつの法律。そんなものはないんじゃよ!」